金の価値 前編

綺麗な金、汚い金
同じ金でも、その手に仕方や言葉１つで簡単に価値観が変わる
誰にも話せないけど、書いたら少しは楽になれる気がするので落書きをさせて頂きます

2016年12月某日

20代半ばにして初めて仕事を休む事にした
自分の仕事は親父と二人で営んでいる自営業
高校を卒業してからはブラブラと自堕落な生活を送っていた自分を拾ってくれたのが親父だった
息子だからと甘くしない厳しさと、隠し切れない父親としての優しさを感じながら過ごした日々は
何があっても忘れる事も無く生涯感謝し続けるだろう

だが自分は仕事を休んだ

理由は経済的理由
去年から収入が激減し、給料が数ヶ月分出なくなってしまったのだ
売上が伸びず、月末の支払いに追われる毎日
自分の力不足もあるからと
貯金を切り崩しながら生活をしていたが
数字が減っていく通帳を眺めた休む前日の夜
親父に電話をかけた

「ごめん。明日、派遣行ってくるわ」

そうか。悪いな。迷惑ばかりかけて
そう厳格な父親から出た言葉に胸を締め付けられる
ありがとうと短く返事をして電話を切った自分はバイクを走らせた

向かったのは郊外にある某ホール

そもそも派遣の予約なんて入れていない
胸が締め付けられたのは親父の言葉だけでない
派遣と偽りスロットを打つという嘘をついた事にも胸を締め付けられたのだ

だが遊ぶつもりはさらさら無かった

自分はある機種が出てからほぼ毎日、近辺のホールの閉店チェックをしていた

その機種は「3×3アイズ」

目押しさえ上手ければ、ほぼ負けない設定C
その設定Cを向かった某ホールはかなりの頻度で入れていた
基本的なパターンとしては旧イベント日
そして短くても3日間、他設定を入れた後にCを入れ、出されなければ翌日以降もCと
かなり読みやすいパターンだが
郊外店で客も少なく、上手い客も居ない為
導入から何度も設定Cが入るかなり良いホールだ
しかもネットに出玉情報が出ない
そしてなによりこのホールは、かなり好材料な事がある

それは並び順入場

設定Cの予想さえ出来れば簡単に座れてしまうというのがこの店をチェックする最大の理由だった

自営業で培った技術の他に
目押しぐらいしか特技の無い自分には
あまりにも美味しい条件の為、たまの休みの日に打つ時は
目立たないように、差枚が700枚を越えない程度でやめていた
だが今回は金銭的にも余裕が無くなったので、命の短いこの機種を設定変更や入れ替えまで打ち切ってしまおうと決意したのだ

そして閉店前のデータは見慣れた
2500GでB2つのCB26
差枚は表示されないがこの履歴で回されないのなら閉店チェックは合格
更には明日は旧イベント日
自信を持ってホールを後にした

家に帰り布団の中で考えたのは
人生で初めて親父に嘘をついた事
今後訪れるであろう親の老後
自分の転職、自分の貯金
明日の結果よりも
今後の不安ばかりが押し寄せる
その不安で全く寝付けず
仕方無く鼻炎の薬を睡眠薬代わりに飲み
時間が経てば次第に夢の中へ

ふと気付けば日も登る6時
休日の9時に行ったって誰一人並ばないホールへ向かうべく準備をし
7時にバイクにまたがる

人生で初めてスロットを仕事と言った一日が始まる



ご閲覧ありがとうございました
次回に続きます

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