- パチセブントップ
- コミュニティ
- パチ7自由帳トップ|ブログコミュニティ
- コラム(ブログ)詳細
しくじり店長・第3話
しくじり店長・第3話

-
さん
- 投稿日:2015/09/12 07:44
「パチンコのプロになるんですよ」
担任教師にそう告げて専門学校を中退してしまった以上、
パチンコの稼ぎで生活するのが漢(おとこ)というもの。
勢いでアルバイトもヤメてしまった私は、
毎日のようにパチンコだけ打つ生活を始めてしまいました。
哀しいですね、バカという生き物は…。
こうして始まった所持金15万円からのパチプロ生活は開始から2週間、
14万円を失った時点でジ・エンド。
ついでに人生の目標も失ってしまった私はそこからの約1年間をなんと、
実家の3畳1間の小部屋に引きこもって生きていました。
1日10時間以上に及ぶテレビゲーム生活。
睡眠時間も同じくグッスリと10時間以上。
たまにジャージ姿で外に出た日は、
近所の本屋でゲーム雑誌とドスケベ雑誌の立ち読み。
友達からの電話は完全スルー。
無言で食事を提供してくれている、
母親からの冷たい視線にも見て見ぬフリ。
全財産は残り数千円。
そんな自分が唯一その存在を許されるのがゲームの世界、
そう思い込むことで現実から目をそらし続けていたのです。
・・・とまあ、
あれこれ思いだしながら書いている自分でさえも呆れるほど、
ダメ人間街道の路上でブッ倒れていた私にパチンコ業界は実にあっさりと、
進むべき一本道を用意してくれたのです。
それは平成6年3月のこと。
日曜日の新聞紙の間にギッシリと詰まった求人チラシ、
そのうちの1枚に何気なく目を落とした瞬間、
頭上に神様(ミリオンゴッドのゼウスみたいな人)が降臨いたしまして、
「お前は、この世界で働くべき人間なのだ…」
という啓示を受けたのです。
(※カタギリ少年はおかしなクスリとかは今も昔もやっていません)
そのチラシにはデカデカと、
「パチンコ○○○、4月オープン!!
新規スタッフ大募集中!!」
と書かれていました。
なるほど、これもある意味パチンコのプロだし、
パチ屋で負けた分はパチ屋で働いて取り返せばいいや、
いろいろ知識が身に付けば勝てるようになるかも知れないし。
私は神様の言うとおりに、
さっそく面接希望の電話をかけました。
ね、
バカって簡単でしょ?
そして面接当日。
スーツを持っていなかった私はとりあえず高校の制服を着用して、
靴はラバーソウル(厚底の靴)という格好で面接に向かいました。
どこの世界にボンタン履いてパンクロッカーみたいな靴を履いて、
就職の面接に行くバカがいるというのでしょう?
いました、
それが当時ハタチのカタギリでした。
しかしながら上には上がいるもので、
面接で私を待ち構えていた中年男性は、
カタギリ君の持つ大人のイメージを破壊するファッションだったのです。
上着はヨレヨレの黒いタンクトップにところどころ穴の開いたGジャン、
下はジャージにサンダル姿。
オマケにボサボサの長髪に小汚い無精ヒゲだらけの顔…。
ハッキリ申し上げますと、
「オジサン、ダンボールのおウチに住んでいるの?」
と逆面接したくなるような気分でした。
しかしこのホームレ…
じゃなかった中年男性はお互いの見た目など意にも介さずいう感じで、
「え~っと… カタギリ君はハタチか。
何でウチで働こうと思うたんじゃ?」
と、
見た目からは想像もできないような鋭い目つきで私をしっかり捉えながら、
強烈な広島弁で質問してきました。
「ハイッ!!
ボクは勉強がとにかく嫌いで学校もロクに通わなかったんですけど、
パチンコだけは大好きなんです。
それで最近は特に仕事とかしてなかったッスけど、
ここのお店の募集チラシを見た瞬間、
ボクの頭の中に神様がおりてきてですね、
とにかくオマエはここで働け、みたいな啓示を受けたんスよっ、
マジでそんなことがあるんだな、と思ったんスけど、
とにかく運命的だなと感じたので電話しましたっ!!」
とまあ、
鋭い視線にビビりつつも私が思いのままに正直に、
根拠の無い自信と共に宣言すると、
この中年男性は私の目をもう一度ジッと見つめた後で、
「…ようわかった。
面接の結果が合格じゃったら来週の月曜日に電話するけぇ、
運と縁があったら、のぅ!!」
と力強く言い放って面接は終了となりました。
そして待望の月曜日。
久しぶりに吸ったマルボロの吸い殻で灰皿は一杯になりましたが、
自宅に電話の音が鳴り響くことはありませんでした。
火曜日もゲームをしながらのお留守番は無駄に終了、
水曜日にも一向にかかってこない電話にカタギリ切れましたよ、
そして面接を受けた店に再度、電話をかけましたよ。
電話に出たのは例の中年男性で、
「お…
おおカタギリ君ね、電話するん忘れちょったわ。
キミは合格じゃけぇ、今度の月曜日から来んさい」
と、
無事に採用の知らせを受けることが出来ました。
ねだるな勝ち取れ、さすれば採用。
ようするに待っているだけじゃダメってことだったんですね。
そしていよいよやってきた初出勤の日。
私の目の前には例の中年男性が立っていたのですが、
その姿は面接の日とはまるで別人だったのです。
髪型は重要文化財も顔負けに整ったパンチパーマ、
あの日の無精ヒゲはキレイに剃り落とされて、
自信に満ちあふれた男らしいキリッとした表情。
ガッチリとした身体を包む高級そうなダブルのスーツ。
「密輸したワニの皮で作られているのですか?」
と真顔で質問したくなるような、
これまた値段がとんでもなく高そうな皮靴。
そう、
この人こそが責任者のヒロタさんで、
私が20年以上の年月を経た今でもなお憧れ続けている、
強くて優しい店長だったのです。
そしてその隣に立っていたのがゴーレム顔負けのいかつい体型をした、
リーゼントパーマ頭のマネージャーのツチダさん。
さらにその横には主任でオールバックで目つきの鋭いシライさん、
班長で横浜銀蠅もビックリのリーゼント頭のトキタさん、
副班長でふんわりパーマ、
だけど眉毛は1センチというニッタさん。
以上、
いずれも強面の5人が一同に集まって、
悪のロイヤル・ストレート・フラッシュが完成というか、
はたまた指名手配犯の集会所というか、
何とも例えようのない恐ろしい人達だなと思ったのが、
私の上司となる人々への第一印象でした。
「じゃあカタギリくん、
キミは副班長のニッタさんについて仕事を覚えてね」
と、
鋭い目つきの割にはやさしい口調で私にそう告げた主任のシライさん。
「ああ良かった、
一番やさしそうな副班長のニッタさんが上司か…」
そうひと息ついたその瞬間、
「カタギリくぅ~ん、よろしくたのむわぁ…」
私にそう話かけながらニヤッと笑ったニッタさんの口の中には、
歯が上下あわせて6本しか生えていなかったのです…
ニッタさんの残りの歯はどこに行ってしまったのか、
いやいやそんな心配している場合じゃねーだろ、
などと思いながら自己紹介をしたのかも知れませんが、
その日のことは残念ながらここまでしか思い出せませんでした。
とはいえ私はようやく、
パチ屋の店員としての第一歩を踏み出しました。
そしてそれは数多くの「しくじり」を生みだしてきた歴史のはじまりでもあるのですが、
狭い部屋に籠ってゲームしかやっていなかった自分にとっては、
ようやく太陽の眩しさを思いだせたような気がして、
ほんの少しだけ嬉しかったことを覚えています。
が、
楽な世界ばかり選んで逃げ回っていた私はたちまち、
パチンコ業界の厳しさを思い知らされることになるのでした…。
※ちなみに採用の電話がかかってこなかった理由を後に店長に聞いてみたところ、
「神様がどうのこうの言うアブないヤツを採用するワケないじゃろ」との返答。
不採用決定の人物から連絡があるとは予想していなかったようで、
ヤル気だけはありそうだからとりあえず採用と言ってしまっただけ、とのこと。
やっぱり、
ねだるな勝ち取れが正解ですな。
0
さんの
共有する
コメントを送る
パチ7自由帳月間賞│特集記事
パチ7自由帳ランキング
ランキングはありません。